スペインの首都マドリードは博物館好き鉱物ファンにとっての楽園です。何と言っても、3つもの鉱物博物館が集まっているところなんてヨーロッパでもここだけですよ!
この3つの博物館はそれぞれに立派な標本を所蔵しており、どれも行く価値があります。そこで今日は、それぞれの特色についてお話しようと思います。
Museo Nacional de Ciencias Naturales(国立自然科学博物館)

ここは3つの中ではオススメ度はいちばん低いですが、それでも行く価値は充分にあります。この博物館にはスペインの古い産地の標本が色々展示されていますが、全体的に標本の質が低く、高品質の標本を多く見てきた人たちには感動が薄いかもしれません。ですがもしお子さんと一緒に周るのならすごく勉強になると思いますよ!

鉱物展示の多くは手入れが行き届いておらず、埃を被った展示や手抜きのラベルなども散見されます。

とはいえ、いくつかの標本には例外的に見事なものもあります。例えば、ElHorcajo鉱山の巨大な緑鉛鉱などは私が今までに見た中で最も大きいです! また、Conil鉱山の巨大な硫黄標本も展示してあります。これらはどちらもスペインの古典的な産地です!


ここでは鉱物そのものの情報に加え、その使い道などが子供にも分かるレベルで紹介されています。その点から言っても、この博物館は3つの中で最もお子さんには魅力的かと思います! ですが勘違いしないで下さいね、鉱物好きの皆さんが満足できるような立派な標本もちゃんと展示されてますよ!


私の意見としては、もし時間に余裕が無いのならこの博物館は寄らなくても良いと思います。残りの二つの博物館の方が必見です! なんと言っても、古くからある素晴らしい博物館ですからね! さあ、それでは次にまいりましょう!
Museo Geominero del Instituto Geológico y Minero de España(ヘオミネロ地質・鉱物博物館)
この博物館は“Museo del IGME”という名称でよく知られています。ここでの”IGME”とは”Instituto Geologico y Minero de España”の略で、地質鉱業学会という意味です。

この博物館は1921年〜1940年に建造され、まず建物自体が一見の価値があります。それぞれのホールの荘厳さはあなたを、スペインの鉱業がヨーロッパの発展を支え、栄華を極めていた時代へと誘うでしょう。




ここでは非常にしっかりと分類された国ごとの鉱物展示を行っており、その中でもマドリードなどいくつかの地域のものは特に充実しています。これらの収蔵品は、私が以前訪れた時には他の多くの素晴らしい標本達に埋もれて特段目立った印象を受けませんでしたが、実際にはそのコレクションの量と産地の豊富さにも目を見張るものがあります。
ですが言ってしまうと、ここの収蔵品にはスペインの珍しい産地の貴重な標本が多くありますが、他の有名産地と比べて見栄えのするものは少ししかありません。下にいくつか、良い標本の写真を載せます!


非常に立派な黄鉄鉱の八面体巨晶, Lillo, Leon

おもしろい形の車骨鉱(Bournonite),Chillon, Ciudad Real
他のスペインの有名産地の標本は,もっと高品質のものが用意できただろうにと思います。

ここの博物館はほんとにオススメです! ゆっくり時間を取れば、国内外の魅力的な標本を思う存分楽しめることでしょう。 さらに会場内が静かで趣ある空気に満ちていれば、博物館を堪能できること間違いなしです! また運が良ければ、学芸員の収集品を展示している興味深い特別展にも出会えるかもしれません!
もう一つのオススメポイントは次に紹介する博物館に近いことです…さあ、それでは次の博物館に行きましょう!
Museo Histórico-Minero Don Felipe de Borbón y Grecia(ドンフェリペ・デ・ブルボン歴史鉱業博物館)
この博物館は長い歴史のある、親しみやすさと整然さを兼ね備えた博物館です。さらに、ここは今まで紹介してきた博物館の中で私の1番のお気に入りの博物館でもあります。なんとこの博物館は、19世紀に実際に使われていたマドリード鉱業学校の素晴らしい建物をそのまま再利用しているんですよ!

この博物館を訪れた際に肝に銘じておかねばならないのは、ここはいつでも開いてる訳ではないということです。予約を入れればいつでも開けてくれますし、毎月第一日曜日(8月を除く)には開館していますが、事前に電話で確認をとるのが良いでしょう。
館内に展示されている鉱物標本や古い文献の多くは非常に貴重で重要なものばかりです。鉱物標本を見る際には、古くから親しまれ続けているスペインの古典産地、例えばAlmaden, El Horcajo, Hiendelaencinaなど、を念頭において見て行くとより楽しいと思いますよ!

鉱物標本もすごく貴重で重要なものが多いです。展示を見ているとほとんど知らないような産地の良質の標本が数多くあることに驚くことと思います。その数例を下に載せますね。


標本はきちんと整理して展示されており、古い木製の棚に程よい照明が当たっています。私が覚えている限り、棚には2種類あり、壁に付随する形の棚とそれ自体で独立している棚があったと思います。そしてそのどれもがこの上なく見事に作られています。博物館の長い歴史を感じさせてくれるこの素晴らしい棚を、できることならこの先もずっと使い続けて欲しいものです。もちろん、新しい棚に変わったなら照明器具などは合わせて新調すべきだと思いますが、そうすることによって失われる何かがあると思います。もちろん、博物館が守り続けている素晴らしい収蔵品の数々に感動することは間違いないでしょうが!

ですがこの博物館もIGME博物館と同じで、世界でも有数の標本をいくつも展示しているという訳ではありません。この博物館は元々、遠い昔に教育目的で設立されたことを忘れないで下さいね。魅力的な博物館とはなにも、不特定多数の人々にもっとも美しく素晴らしい標本を見せる博物館ではありません。この博物館はどちらかと言うと、スペインの無名な産地からの貴重な標本の価値をちゃんと理解できる人向けかもしれませんね。

さて、ではこの短い鉱業博物館見学ツアーの締めに、この博物館で私が一番気に入っている標本を紹介しましょう。これはものすごく珍しい巨大な閃亜鉛鉱の標本です(from the Picos de Europa Mountains, Spain)。このラベルに記載されている”Aliva”とは宝石質の閃亜鉛鉱を産出することで有名なPicos de Europa の中心部の地域の名前です。この標本は結晶形が非常にはっきりとしており、透光性はほぼありません。このことから考えられるのは、この標本は恐らく有名な Aliva 地区のLas Manforas鉱山から産出したのでは無く、Picos de Europaの古い珍しい鉱山から産出したのではないかということです。

それでは記事全体の締めとしてもうひとつ。素晴らしい標本をみなさんにお見せしてお別れです。皆さんがこの標本のことを気に入ってくれて、そしてまた私たちのブログをこれからも愛読してくれることを祈ってます。きっとまた鉱物博物館についての記事を書きますよ!

Juan Fernandez Buelga & Tignita