Mineralogical museums of Spain

スペインの都,マドリードの鉱物博物館

スペインの首都マドリードは博物館好き鉱物ファンにとっての楽園です。何と言っても、3つもの鉱物博物館が集まっているところなんてヨーロッパでもここだけですよ!

この3つの博物館はそれぞれに立派な標本を所蔵しており、どれも行く価値があります。そこで今日は、それぞれの特色についてお話しようと思います。

Museo Nacional de Ciencias Naturales(国立自然科学博物館)

 博物館入り口に立つJuan, 2005年. ちょうど私がマドリードの大学で地質学の道に進もうとしていた頃です.時が経つのは早いですね!
博物館入り口に立つJuan, 2005年. ちょうど私がマドリードの大学で地質学の道に進もうとしていた頃です.時が経つのは早いですね!

ここは3つの中ではオススメ度はいちばん低いですが、それでも行く価値は充分にあります。この博物館にはスペインの古い産地の標本が色々展示されていますが、全体的に標本の質が低く、高品質の標本を多く見てきた人たちには感動が薄いかもしれません。ですがもしお子さんと一緒に周るのならすごく勉強になると思いますよ!

国立自然科学博物館,マドリード
国立自然科学博物館,マドリード

鉱物展示の多くは手入れが行き届いておらず、埃を被った展示や手抜きのラベルなども散見されます。

残念な展示の一つ、ラベルの無い蛍石標本です。標本の放置具合もお分かりいただけますか?
残念な展示の一つ、ラベルの無い蛍石標本です。標本の放置具合もお分かりいただけますか?

とはいえ、いくつかの標本には例外的に見事なものもあります。例えば、ElHorcajo鉱山の巨大な緑鉛鉱などは私が今までに見た中で最も大きいです! また、Conil鉱山の巨大な硫黄標本も展示してあります。これらはどちらもスペインの古典的な産地です!

巨大な緑鉛鉱,El Horcajo, Ciudad Real.
巨大な緑鉛鉱,El Horcajo, Ciudad Real.
こちらも巨大な硫黄標本,Conil, Cadiz
こちらも巨大な硫黄標本,Conil, Cadiz

ここでは鉱物そのものの情報に加え、その使い道などが子供にも分かるレベルで紹介されています。その点から言っても、この博物館は3つの中で最もお子さんには魅力的かと思います!  ですが勘違いしないで下さいね、鉱物好きの皆さんが満足できるような立派な標本もちゃんと展示されてますよ!

ヘマタイト(赤鉄鉱), Elba island, Italy
ヘマタイト(赤鉄鉱), Elba island, Italy
方鉛鉱の緑鉛鉱仮,フランス
方鉛鉱の緑鉛鉱仮,フランス

私の意見としては、もし時間に余裕が無いのならこの博物館は寄らなくても良いと思います。残りの二つの博物館の方が必見です! なんと言っても、古くからある素晴らしい博物館ですからね! さあ、それでは次にまいりましょう!

Museo Geominero del Instituto Geológico y Minero de España(ヘオミネロ地質・鉱物博物館)
この博物館は“Museo del IGME”という名称でよく知られています。ここでの”IGME”とは”Instituto Geologico y Minero de España”の略で、地質鉱業学会という意味です。

IGME museum, Madrid, Spain
博物館の入り口. マドリードの23 Rios Rosasにあります.

この博物館は1921年〜1940年に建造され、まず建物自体が一見の価値があります。それぞれのホールの荘厳さはあなたを、スペインの鉱業がヨーロッパの発展を支え、栄華を極めていた時代へと誘うでしょう。

IGME museum
IGME博物館の内装
IGME museum fossils
メインホールへの入口
IGME main hall
メインホールの様子
Celing main hall IGME museum
メインホールの天井

ここでは非常にしっかりと分類された国ごとの鉱物展示を行っており、その中でもマドリードなどいくつかの地域のものは特に充実しています。これらの収蔵品は、私が以前訪れた時には他の多くの素晴らしい標本達に埋もれて特段目立った印象を受けませんでしたが、実際にはそのコレクションの量と産地の豊富さにも目を見張るものがあります。

ですが言ってしまうと、ここの収蔵品にはスペインの珍しい産地の貴重な標本が多くありますが、他の有名産地と比べて見栄えのするものは少ししかありません。下にいくつか、良い標本の写真を載せます!

Freieslebenite
見事なフライエスレーベン鉱(Freieslebenite)標本, Hiendelaencina, Guadalajara, Spain.
Octahedral pyrite

非常に立派な黄鉄鉱の八面体巨晶, Lillo, Leon
 おもしろい形の車骨鉱(Bournonite),Chillon, Ciudad Real

おもしろい形の車骨鉱(Bournonite),Chillon, Ciudad Real

他のスペインの有名産地の標本は,もっと高品質のものが用意できただろうにと思います。

Fluorite IGME museum
アストゥリアス地方(Asturias)の低品質の蛍石標本

ここの博物館はほんとにオススメです! ゆっくり時間を取れば、国内外の魅力的な標本を思う存分楽しめることでしょう。 さらに会場内が静かで趣ある空気に満ちていれば、博物館を堪能できること間違いなしです! また運が良ければ、学芸員の収集品を展示している興味深い特別展にも出会えるかもしれません!

もう一つのオススメポイントは次に紹介する博物館に近いことです…さあ、それでは次の博物館に行きましょう!

Museo Histórico-Minero Don Felipe de Borbón y Grecia(ドンフェリペ・デ・ブルボン歴史鉱業博物館)
この博物館は長い歴史のある、親しみやすさと整然さを兼ね備えた博物館です。さらに、ここは今まで紹介してきた博物館の中で私の1番のお気に入りの博物館でもあります。なんとこの博物館は、19世紀に実際に使われていたマドリード鉱業学校の素晴らしい建物をそのまま再利用しているんですよ!

Don Felipe de Borbón y Grecia museum
建物の外観. Rios Rosas通り21番地.

この博物館を訪れた際に肝に銘じておかねばならないのは、ここはいつでも開いてる訳ではないということです。予約を入れればいつでも開けてくれますし、毎月第一日曜日(8月を除く)には開館していますが、事前に電話で確認をとるのが良いでしょう。

館内に展示されている鉱物標本や古い文献の多くは非常に貴重で重要なものばかりです。鉱物標本を見る際には、古くから親しまれ続けているスペインの古典産地、例えばAlmaden, El Horcajo, Hiendelaencinaなど、を念頭において見て行くとより楽しいと思いますよ!

Pyromorphite El Horcajo
飾り戸棚にある巨大な緑鉛鉱標本(Piromorphite), El Horcajo, Ciudad Real.

鉱物標本もすごく貴重で重要なものが多いです。展示を見ているとほとんど知らないような産地の良質の標本が数多くあることに驚くことと思います。その数例を下に載せますね。

綺麗な若草色の緑鉛鉱,珍しい産地のCampillo de Salvatierra, Salamancaから
綺麗な若草色の緑鉛鉱,珍しい産地のCampillo de Salvatierra, Salamancaから
Native copper Spain
見事な自然銅標本, Herreria, Huelva, Spain.

標本はきちんと整理して展示されており、古い木製の棚に程よい照明が当たっています。私が覚えている限り、棚には2種類あり、壁に付随する形の棚とそれ自体で独立している棚があったと思います。そしてそのどれもがこの上なく見事に作られています。博物館の長い歴史を感じさせてくれるこの素晴らしい棚を、できることならこの先もずっと使い続けて欲しいものです。もちろん、新しい棚に変わったなら照明器具などは合わせて新調すべきだと思いますが、そうすることによって失われる何かがあると思います。もちろん、博物館が守り続けている素晴らしい収蔵品の数々に感動することは間違いないでしょうが!

Mineral cabinet Museo escuela de minas madrid
壁際の棚の一つです.アストゥリアスの蛍石標本がいくつか見えますね.

ですがこの博物館もIGME博物館と同じで、世界でも有数の標本をいくつも展示しているという訳ではありません。この博物館は元々、遠い昔に教育目的で設立されたことを忘れないで下さいね。魅力的な博物館とはなにも、不特定多数の人々にもっとも美しく素晴らしい標本を見せる博物館ではありません。この博物館はどちらかと言うと、スペインの無名な産地からの貴重な標本の価値をちゃんと理解できる人向けかもしれませんね。

mineral cabinet madrid
棚に彫られたマドリード鉱業学校の紋章.

さて、ではこの短い鉱業博物館見学ツアーの締めに、この博物館で私が一番気に入っている標本を紹介しましょう。これはものすごく珍しい巨大な閃亜鉛鉱の標本です(from the Picos de Europa Mountains, Spain)。このラベルに記載されている”Aliva”とは宝石質の閃亜鉛鉱を産出することで有名なPicos de Europa の中心部の地域の名前です。この標本は結晶形が非常にはっきりとしており、透光性はほぼありません。このことから考えられるのは、この標本は恐らく有名な Aliva 地区のLas Manforas鉱山から産出したのでは無く、Picos de Europaの古い珍しい鉱山から産出したのではないかということです。

Sphalerite Spain
すごく珍しいキャビネットサイズの閃亜鉛鉱標本, Picos de Europa mountains, Spain.

それでは記事全体の締めとしてもうひとつ。素晴らしい標本をみなさんにお見せしてお別れです。皆さんがこの標本のことを気に入ってくれて、そしてまた私たちのブログをこれからも愛読してくれることを祈ってます。きっとまた鉱物博物館についての記事を書きますよ!

freislebenite
素晴らしいフライエスレーベン鉱標本, San Carlos Mine, Hiendelaencina, Guadalajara, Spain

Juan Fernandez Buelga & Tignita

IMG_3546

複雑な形をなす蛍石 

今回の記事では蛍石のモディフィケーション(訳者注:変形のようなもの)について紹介していきます

なお、今回の記事については面白いモディフィケーションの物を手に入れたり、わからないモディフィケーションに遭遇したらその都度そちらの写真も投稿する予定です!

基本的にはスペイン・アストゥリアス州の蛍石とモディフィケーションに関して投稿していきます。というのも、アストゥリアス州の蛍石には様々な面白いモディフィケーションがあることが多いからです。

ご存知の通り、幾千もある鉱物の中でも蛍石はもっとも愛されている鉱物の一つと言えます。この場では敢えて蛍石こそが最も愛好家の多い鉱物と言い切ってしまいましょう!なんといっても豊富なカラーバリエーション、共生鉱物、結晶形、モディフィケーションと色々な要素が詰まっていますからね!

最初の標本は最近友人に譲ったこのサムネイル標本からいきましょう。

それから、もしモディフィケーションが間違っていたり議論したいときメールで知らせていただくか、コメントを残していただけるとありがたいです。もしかしなくても、怪しいものもあるでしょうから。

蛍石 Emilio鉱山、Asturias州、スペイン 
蛍石 Emilio鉱山、Asturias州、スペイン トラペゾヘドロンのモディフィケーション{113}がよく表れています。
蛍石 Emilio鉱山、Asturias州、スペイン 
別視点から
蛍石 Emilio鉱山
銀色の内包物(訳者注:産地から考えるに恐らくビチューメン、瀝青でしょうか。)

 

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今日新たにLa Viesca鉱山,Asturias州,スペインの変わった蛍石を追加しました。

数年前にそれぞれ別のポケット からこのモディフィケーションがある蛍石を発見してとても驚いたのです。というのも初めて見るタイプのものでしたから!剥離跡に似てはいますが、それとは明らかに違う感じなのです。

それでは写真を見ていきましょう。

蛍石 La Viesca 鉱山
この写真が一番わかりやすいでしょう。一見普通の六面体にみえますが、十二面体によるモディフィケーションとそして面白い線が複数あるのが見えますね!
(訳者注:この線は元々共生していた方解石がとれてしまった跡かもしれないという指摘がありました。ですがどちらにせよ大変面白いものだと思います!!)
蛍石 La Viesca 鉱山
別方向から。よく見ると十二面体によるモディフィケーションが確認できます。
蛍石 La Viesca 鉱山
全体像 標本サイズ約  3cm

 

Mos & Juan Fernandez Buelga

 

 

rare fluorite modification

Modified fluorite crystals

In this post I am going to write about modified fluorite crystals. It is not going to be an static post, so each time I come across a nice modification, or I wonder about which type of modification has one of my specimens,… I will let you know through this post. Basically, I will post modified fluorite crystals from Asturias, but that is a lot because some of the fluorite localities in Asturias produce many lovely and different modifications.

As you probably already know, among thousands of different mineral species, fluorite is one of the most loved ones. I would dare to say it is the mineral that most collectors like! It can present lots of different colours, awesome and different mineral associations, crystallizations, corner modifications and so on!

Let’s start with one thumbnail fluorite specimens I sent recently to a good friend.

Please if you think any of the modifications presented here are incorrectly named, or just because you want to discuss about them, please feel free to let me know through email or just write a comment! Pretty sure there will be doubts in some crystals!

Modified fluorite crystal
Fluorite crystal from Emilio Mine, Asturias, Spain. It shows a trapezohedron modification {113}, specially well developed in one of its faces.
Modifications in fluorite
Another view of the same modified crystal
Inclusions in modified fluorite crystal
Silvery coloured inclusions inside the modified crystal

 

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Today I just shot again a really weird modification on one fluorite specimen from La Viesca Mine, Asturias, Spain.

I found some of these modifications a few years ago in different pockets and it was a total surprise to me. I had never seen anything like this.

It reminds to the pattern when you separate two crystals but this is clearly not that case.

Let’s see some photos.

rare dodecahedral modification
With this photo you can appreciate well the modification. Looks like a normal cube, but in one of its corners it presents a dodecahedral modification plus many fine lines on each side.
rare modified fluorite
Other side of the same crystal showing very minor dodecahedron modifications.
Modified fluorite
Overall view of the specimen. It is around 3 cm.

 

Juan Fernandez Buelga