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色でみる スペイン,アストゥリアス地方の蛍石


 

 先日ウェンデル・ウィルソン氏は、自身のツーソン・ショー(Tucson Show 2014)のレポートの中でこう語っていました。”色こそが鉱物において最たるものだ——  “ と。そして、この彼の主張に賛同する鉱物収集家の方は少なくないでしょう。これは蛍石について語る場合においても同様です!

さて、この記事はスペインのアストゥリアス地方の蛍石に関する連投記事の第1回目です。今回は、蛍石の豊富なカラーバリエーションに迫ります。また今後はその結晶の形や産状について、みじかく簡単な記事で紹介していく予定です! あまり長くても疲れてしまうだけですからね。

さて、おそらく皆さんもご存知でしょうが、スペイン北部アストゥリアス地方の蛍石は、その立方体の形で世界的に有名です。

アストゥリアス地方(赤線で囲んだ部分), スペイン北部, Google Maps
アストゥリアス地方(赤線で囲んだ部分), スペイン北部, Google Maps

スペインにはアストゥリアス地方以外にも蛍石産地は多くありますが、その多くは低品質のものしか産出しないマイナーなものです。なので今回はアストゥリアス地方の蛍石に限定して、その豊富なカラーリングを見ていきましょう。

外国のフローライト収集家の方は、アストゥリアス地方の産地について困惑されることがままあるようです。多くの産地があるため、誤ったラベルの付いた標本も多くみられます。そのため、正しい産地はどこなのか、ということは多くのコレクターにとって大きな関心事となってきます。

アストゥリアスの蛍石産地についてあやふやな認識しかもっていない人は多いでしょう。なので今回の記事を通していっしょに整理して行きましょうね! まず始めに、ここ最近の有名な4つの産地について記します。それぞれ全く異なる特徴を持った蛍石を産出しますが、時折、産地の判別が難しいものに出会います。

1- La Collada

 La Collada鉱山地帯はいくつかの蛍石鉱山で構成されます。La Colladaの蛍石の多くは青から紫にかけての色を持って産出しますが、くすんだグリーンも特に珍しい訳ではありません。ここのものはゾーニングが見られるものが多いです。紫と青のバイカラー、又は明るい青と暗い青のバイカラーになっているものはすごく貴重でなかなかお目にかかれません。

Level 75, Josefa Veneros vein, La Collada. dodecahedron面に紫色のカラーリング. Fernandez Buelga Collection標本. Carlos Casariego撮影.
Level 75, Josefa Veneros vein, La Collada. dodecahedron面に紫色のカラーリング. Fernandez Buelga Collection標本. Carlos Casariego撮影.

La Colladaの緑の蛍石について: 特にいくつかの古くからの地域では、くすんだ緑色のものの産出は珍しくありません。ですがそれが鮮やかな緑色であれば話は違い、並外れて貴重なものになります。最近では緑色の標本が市場に出回ることは滅多にありません。

Fluorite  Juan Fernadez Buelga 撮影
Green fluorite from “Corta la Sirena”, La Collada de Atras, La Collada. Juan Fernandez Buelga撮影

メモ: La Viesca鉱山は露天掘りで採掘されてきた地下鉱山です。La Collada鉱山地帯の内部に位置します。明るい青色の蛍石や、暗い青紫の標本を主に産出します。紫色のものは貴重です。少しのグリーンを含む青色のものも珍しいです。カラーレスのものは小さな結晶のものは多くありますが、大きな結晶のものになると非常に珍しいです。しっかりした発色の(Saturation)水色の標本は貴重です。

The colour violet. Source Wikipedia.
ヴァイオレットの色見本(Wikipediaより).
詳しくはこちら: http://en.wikipedia.org/wiki/Purple
Saturation scale
色の濃淡表(%). 画像元 http://www.digital-intermediate.co.uk
詳しくはこちら: http://www.digital-intermediate.co.uk/colour/colourbasics.htm
カラーレスやすごく薄い青色の蛍石はLa Viesca鉱山でよく産出します. Juan Fernandez Buelga所蔵, 撮影.
カラーレスやすごく薄い青色の蛍石はLa Viesca鉱山でよく産出します. Juan Fernandez Buelga所蔵, 撮影.
淡い水色の結晶内部に濃い水色のファントムが見られます.外側の縁にある暗い青色のファントムにも注目です.
淡い水色の結晶内部に濃い水色のファントムが見られます.外側の縁にある暗い青色のファントムにも注目です. Juan Fernandez Buelga所蔵, 撮影.
La Viesca鉱山の強烈なブルーの標本. Juan Fernandez Buelga所蔵, 撮影.
La Viesca鉱山の強烈なブルーの標本. Juan Fernandez Buelga所蔵, 撮影.
多くのカラーゾーニングが見られる貴重な標本. 明るい紫から始まり,暗紫色,水色と続きます. 赤色や黄色に見える部分はインクルージョンによるものです
多くのカラーゾーニングが見られる貴重な標本. 明るい紫から始まり,暗紫色,水色と続きます. 赤色や黄色に見える部分はインクルージョンによるものです. La Viesca, La Collada. Juan Fernandez Buelga所蔵, 撮影.
非常に濃い露草色(少しの緑を含む青色)の標本.青色のファントムも見られる
非常に濃い露草色(少しの緑を含む青色)の標本.青色のファントムも見られる. La Viesca. Juan Fernandez Buelga所蔵, 撮影.
非常に濃い露草色(少しの緑を含む青色)の標本.青色のファントムも見られる. La Viesca. Juan Fernandez Buelga所蔵, 撮影.
非常に濃い露草色(少しの緑を含む青色)の標本.青色のファントムも見られる. La Viesca. Juan Fernandez Buelga 所蔵, 撮影.

 

2- Berbes mining area
 青色やすみれ色、紫色のものが最も珍しいものになるのでしょうが、澄んだ青色のものも同様に珍しいです。一般的で簡単な法則として言える事は、赤色に近づけば近づくほど貴重になっていくということでしょう。Berbes地域はLa Collada地域に比べるとより多くの赤系統の標本を産出します。

Purple colour. Source Wikipedia.
紫の色見本(Wikipediaより).
詳しくはこちら: http://en.wikipedia.org/wiki/Purple

Berbes地域の蛍石にはゾーニングが見られることがよくありますが、その一方で、同一結晶の中に2種類の異なる色が見られることはほとんどありません。明るい紫の結晶の中に少し暗めの紫のファントムのあるものはよく見られます。これは青色のものでも同様です。ですが、青色の結晶の中にすみれ色や紫色のファントムがあるものは大変貴重です。

強烈なすみれ色(ヴァイオレット). Berbes. Juan Fernandez Buelga所蔵, 撮影.
強烈なすみれ色(ヴァイオレット). Berbes. Juan Fernandez Buelga所蔵, 撮影.
Purple fluorite
濃いすみれ色の貴重な標本. Juan Fernandez Buelga所蔵, 撮影.
Purple fluorite
Berbes地方の紫色の標本. Fernandez Buelga Mineral Collection標本. Carlos Casariego撮影.
Pink fluorite
ピンク色に近い紫色の標本. 同じ系統の色の鮮やかなファントムに注目. Fernandez Buelga Mineral Collection標本. Carlos Casariego撮影.

3- La Moscona Mine
 La Moscona鉱山の地下から採掘されるほとんどの全ての蛍石は黄色をしています。黄色とひとくちに言っても、淡黄色や灰色がかったものから蜂蜜色のものまで幅広く産出しますが、なかでも鮮やかな黄色のものが、黄色の中ではおそらく最も珍しいものでしょう。また稀にですが、紫色を伴う暗青色のものや、強烈な赤色のものも見ることがあります。

Red fluorite
一般的な黄色のものと貴重な赤色のものが共生した標本. La Moscona Mine. Juan Fernandez Buelga所蔵, 撮影.
Rare fluorite
濃い暗紫色と黄色の蛍石が共生した珍しい標本. La Moscona Mine. Juan Fernandez Buelga所蔵, 撮影.

La Moscona鉱山の標本でゾーンの見られるものだと、蜂蜜色と他の黄色のものがよくみられます。より珍しいものになると赤みを帯びたファントムを持つものだとか、最も珍しいものだと青色の結晶の中に黄色のファントムが見られるものなどがあります。

Honey yellow fluorite

La Moscona鉱山の黄色と蜂蜜色の蛍石クラスター. Juan Fernandez Buelga所蔵, 撮影.

メモ: Villabona鉱山はMoscona鉱山の近くのもう一つの蛍石鉱山です。標本を見比べてみる限り、どちらの鉱山も同じ蛍石鉱床を供給源としていると考えられます。二つの鉱山入口間の距離は大体5kmほどしか離れていません。そのため、この2つの鉱山の標本を区別するのは至難の業です。言えることとしては、La Moscona鉱山の標本は比較的暖色系の黄色(蜂蜜色や赤みを帯びた黄色など)であるのに対し、Villabona鉱山のものは寒色系の黄色(鮮やかな黄緑を含むような黄色など)であるように思います。

上に記したように、La Moscona鉱山のものとVillabona鉱山のものを判別することはプロにも至難の業なのです! ですので、これはすごく個人的な意見ではありますが、この2鉱山の標本をいつでも完璧に判別するということは不可能なのかと思います! それぞれの産地でよく見られる産状と照らし合わせて、丁寧に産地の見当を付けていったとしても、誰しも遅かれ早かれ間違えてしまうでしょう。

Rare calcite with fluorite
見てもらえば分かるように、Villabona鉱山のから出る蛍石の色はMoscona鉱山の多くの標本と全く変わりません。ですがこの標本のように方解石(calcite)が共生したものは珍しいです. Juan Fernandez Buelga所蔵, 撮影.

4- Emilio Mine
 この地下鉱山からもっとも多く産出するのはカラーレスの蛍石です!灰色がかったものや美しい水のように澄んだ色をした標本を産出したりします。水色のものも珍しくありません。暗い青色のものは非常に珍しいですが、この鉱山のいくつかの区画においては珍しくありません。この鉱山に一貫して見られる特徴は色が薄いことです。

特徴的な灰色がかった結晶と外縁に水のように澄んだファントムが見えるEmilio鉱山の端正な標本です.ファントムは写真では分かりづらいですね. 結晶全体に見られる炭化水素油(ビチューメンbitumen)のインクルージョンにも注目です. Juan Fernandez Buelga所蔵, 撮影.
特徴的な灰色がかった結晶と外縁に水のように澄んだファントムが見えるEmilio鉱山の端正な標本です.ファントムは写真では分かりづらいですね. 結晶全体に見られる炭化水素油(ビチューメンbitumen)のインクルージョンにも注目です. Juan Fernandez Buelga所蔵, 撮影.

メモ: Jaimina鉱山はEmilio鉱山のすぐ近くにあるもう一つの地下蛍石鉱山です。確かにこれらの鉱山は繋がっているのですが、二つの鉱山の入り口は2kmも離れています。Jaimina鉱山の標本とEmilio鉱山の標本を区別することは実際的に不可能です。これはさきほど記した、La Moscona鉱山とVillabona鉱山の話と良く似ていますね。もちろん、それぞれの特徴を挙げることは出来るでしょうが、実際に標本をそれで一概に区別するのは難しいでしょう。これはすごく個人的で不確かな意見ですが、jaimina鉱山で採れた蛍石は暖色系の青色をしていて、Emilio鉱山で採れた蛍石は比較的寒色系の青色をしているように感じます。もしかして、これはJaimina鉱山の方がBerbes地域にEmilio鉱山よりも近い位置にあるからでしょうか?

さて、今回の記事、楽しんでいただけましたか?もし何かコメントや意見、提案などがありましたら遠慮なくご連絡くださいね。

近いうちにこの記事に新しい写真を追加する予定です。ちょくちょく覗いてみて下さいね!

www.spanishminerals.com

Juan Fernandez Buelga & Tignita

現在、アストゥリアス地域の多くの蛍石鉱山はいくつかを残してほぼ閉業しています。これらの鉱山での鉱物収集は、鉱山が運営する鉱業会社が禁じているだけでなくスペインの法律でも禁じられています